1年前、宮崎県を襲った口蹄疫。約19万頭の牛・豚を殺処分に追い込み、当時の宮崎県に「非常事態宣言」発令させた。今、新聞でその言葉を見なくなって久しい。その後、口蹄疫はなくなったのか。違う。そのウィルスは韓国で猛威を振るっていた。
2010年11月末、最初の口蹄疫はアンドン市で見つかった。最初に見つかった時の対応が遅れた。検査に1週間もかかってしまったのだ。その間に交通網の消毒・車両規制など行われないまま、瞬く間に口蹄疫ウィルスは韓国全土に広がってしまった。
「家畜は家族も同然なんです。」韓国の畜産農家で宮崎と同じ言葉を聞くとは思わなかった。韓国安城市で養豚農家をしているイ氏は語る。彼の豚はウィルスに感染したわけではなく、発生した農家の半径3k以内に入ってしまっていたため、豚はすべて安楽死させられた。宮崎と違うのは種豚は無事であったことだ。移動制限は約2週間前に解除され、もう豚を飼育していた。しかし、近郊の殺処分された豚の穴にビニールシート・パイプ管が、まだ時が経っていないことを物語っている。
韓国は1997年、台湾の口蹄疫発生を受け、防疫指針書を改正している。空港での検疫を強化し、以来観光客は必ず消毒マットを踏まねばならなくなった。一見どこにもウィルスの危険はないようにみえる。ところが、今回の口蹄疫は、断定できないがベトナムからの観光客が原因であるかもしれないそうだ。消毒マット、厳しい検疫だけでは防ぎきれない。そのことを示している。
今回の口蹄疫蔓延を踏まえ、韓国政府は再度防疫指針書を改定することになった。以前は農林部が政策、地方自治体が移動制限と殺処分・・・などバラバラだった政策を「農林水産検疫本部」に集約させ、より迅速に対処できるようにした。そして、新規で畜産業をする者への教育をより厳密にした。これらの政策だけではなく、民間団体でもより早く疾病を報告できるよう毎日電話で確認するため、200人規模のスタッフを用意したそうだ。さらに消毒剤もマイナス温度でも固まらない商品を現在開発中である(発生したのが11月だったため、消毒剤が冷気で固まってしまった。韓国全土に口蹄疫が広がってしまった一因である)。
韓国の取材をしていく中で、韓国の養豚農家や記者の方に言われた。「日本の宮崎で起こった口蹄疫も、現在韓国が苦しめられている口蹄疫も同じことです。家族のように暮らしてきた牛・豚が死んでしまった。どうかこのことを日本の人にも伝えてください。」人間がどんなに防ごうとしても、伝染病は防ぎ切れないのか。エイズ、エボラ出血熱、インフルエンザなど人間を脅かす感染症がある。それらと同じように、牛や豚・鶏の感染病を予防しなければならない。地球温暖化の影響で、東南アジアでしか生息できなかったハエや微生物が範囲を広げ、それらを難しくさせている。従来の防疫方法では追いつけない。まず、国際空港だけではなく、全ての空港に消毒マットを配置することが必要である。足元ではなく、手元も消毒をしなければならない。家畜のことは関係がないからと、自己申告を疎かにしない。日本の牛・豚・鳥肉の経済効果は年間で500億を超えるそうだ。それらの家畜の安全は今飼い主と地方農協の一枚岩で守られている状態である。それらの安全の壁は、私たちが意識をなくしてしまえばすぐに崩れてしまう。貴重な財産をまた土の中に埋めてしまうことになってはならない。